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  • Kiana

「頑張らない」令和のわたしたち


二週間に一度のうつ病のカウンセリングを受けていた時のこと。


「休職してから何をやっても失敗するんです。計画を立てて本を買って、試験に申し込んでも準備が間に合わず、何も得られていない。その繰り返し。今日だってカウンセリングに遅れてきた。今度こそ頑張ります」と話したら、カウンセラーさんから「根深いねえ」と言われた。



「何がですか?」



カウンセラーさんは言う。

「令和という時代には、もうみんな頑張らなくなってきたんだから、あなたが頑張らなくても誰も怒らないし迷惑しないのよ。」


私は呪文のように「頑張る」と言っているらしい。でもたしかに、休職してからも会っている多くの友達の口癖は「私仕事頑張るの辞めたわ」。

本当によく聞く。何人もそう語る。あまりによく聞くのでビックリする。


一方休職するまでの私は、同じくらい精神的な負担をおいながら、頑張っていた親友とだけ仕事の苦労を話し合い、頑張っている自分たちを讃え合い、愚痴をこぼし、立っているのがやっとなくらい、頑張っていた。


そしてカウンセラーさんは言った。


「頑張るって素晴らしいことよ。あなたはその素晴らしさを知っている素敵な人。そんなあなたが、頑張らない人たちの中で少し頑張るのを辞めて休んだって、全然遅れたりしないわ。こうやって止めないと頑張り続けちゃう人なんだから。そうしてあなたがやっと休んだら、それは停止じゃなくてエネルギーチャージで、終わったらまたキャリアに戻るでしょ。でも周りはみんな頑張らないんだから、エネルギーをきちんとチャージをしたあなたは、すぐにそんな周りの人たちから頭一つ分も、三つ分くらいは余裕で抜き出るわよ。だからね、今は頑張るの禁止。わかった?(笑)」



これでもきっと私は頑張るのを辞められないし、それも彼女はお見通しだが、すごく心が軽くなった。


 

うつ病って、頑張りすぎる人もなるらしい。

「心が弱い」とか「傷つきやすい」って言われると、なんだか私は違和感を感じる。

「そんなことないもん」と言いたくなる。


そう。「そんなことない」って言う人が案外、自分が気づかないうちに自分を追い込んじゃって、うつ病になるのかも。



うつ病って、一度なったらずっと暗黒の時間を過ごすみたいな、ずっと洞窟の中を彷徨ってて、気づいたら背中が曲がる頃に出てくるみたいな、途方もなく長い時間、ずっと暗い時間を過ごすイメージがあるんじゃないかと思う。


始まりもすごく暗くて、「人生ずっと暗黒時代です」みたいな感じのイメージがあるんじゃないかな。


私の中ではそれは違った。自分がなってみて分かった。


私は一年前に大きなきっかけがあったけど、数ヶ月前にやっと休職するくらいの診断が出るまでの人生は、別にずっと暗かったわけじゃなくて、むしろ大きな挫折もなく生きてきた、怪我知らずの骨太な人生だった。


たまたま一年前に差した影があまりに不幸なもので、今はまだそれを吹き飛ばすだけのエネルギーが足りていないだけ。


でもその影は、ずっと私だけを追いかけてくる雨雲じゃなくて、たまに晴れる霧みたいなもの。だから私は頑張りすぎるくらい頑張れたし、たまに太陽が照らしてくれるから、転ばずに走れた。


うつ病になってもうしばらく経っちゃった今でも、別に毎日曇りや雨じゃない。

すっごく楽しくて幸せで、「お休みバンザイ!」って感じの快晴の日もある。

自分がうつ病患者ってことをすっかり忘れる日もある。


太陽だって地球の反対側に沈んでいって、私たちを照らす役割を十二時間も、季節によってはそれ以上を、お月様に任せるでしょう?


私だって頑張るのを少しやめて、生き急いできた自分をピットに案内して、代わりに誰かに頑張ってレースを走ってもらったっていいじゃない。


お月様に一日の半分も役割を任せちゃう太陽を地球上のみんなが大好きで、太陽がくれるエネルギーを待ち望んでいるみたいに、別に頑張りすぎなくても、私たちも太陽みたいに、一人一人が大勢の誰かに愛されて生きているの。

別に頑張りすぎなくても、私たちのことを愛する人はそこにいて、私たちはお互いに知らず知らず、エネルギーを分かち合っているの。


お月様と太陽が上手にバランスを取り合って存在しているように。


だから、頑張りすぎない令和の私たちは、

それを先の世代に責められるだけの、Z世代でもミレニアムでもなんでもなくて、自分を大事にする心の余裕を保ちながら生きている、上手に生きている一人一人なの。


ずっと走れる人もいる。たまにエネルギーチャージした方が走れる人もいる。ゆっくり確実に進みたい人もいる。


私たちは、頑張りすぎないっていうより、自分の生き方が分かっている人たちなの。

これは私たち一人一人の、上手な生き方の集合話。



編集 Emiru Okada

グラフィック Ren Ono



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