「美しさの多様性」
ほんの少しずつではあるけれど、この言葉の意味が少しずつ世間で受け入れられるようになったと感じる。
それに私自身も、幼い頃から植え付けられた「美しさの基準」から、自らの考えを解放しようと努力している。
ジャニス・ミリキタニは日系アメリカ人の詩人でありアクティビストだ。今でこそ、美しさの多様性を求める運動が盛んになっているけれど、ジャニスは私たちが生まれる何十年も前から美しさの基準というものに疑問を抱き、詩という形でその違和感を訴えてきた。
今回は、そんな彼女の詩「Recipe」を紹介したいと思う
丸い目
用意するもの: ハサミ、透明なスコッチマジックテープ、
水性の黒いアイライナー
オプション:つけまつげ
まずは洗顔をしっかりとする。
最善の結果を得るためには、瞼含め顔全体にパウダーを付けること。
(色は明るめの方が、望ましい効果を期待できる)
次にハサミを使い、マジックテープを幅1.57mm、瞼の長さ次第で、長さ12.7mm〜19.05 mmに切ろう。
瞼の中心より少し上の部分に、しっかりとテープを貼り付けよう
(手鏡を上から覗くようにすると、適した箇所を見つけることができる)。
つけまつげを使用する場合は、まず瞼にくっ付けて、余った皮膚はまつげの根元に被せるように糊を付けよう。
仕上げに黒いアイライナーをテープと瞼全体に塗ろう。
決して泣かないこと。
日系アメリカ人としてアメリカで生まれ育ち、アイデンティティーでもあるはずの自分の目が西洋の美の基準を満たしていない為、いつしかコンプレックスとなってしまった悲しさ、アイデンティティーを消してでも必死に美の基準に追いつこうとすることの空虚さを理解しながらも、止められない辛さが “Do not cry” という言葉に込められているように感じる。
「大きな目」これはだいぶ前から、西洋だけでなく日本でも美しさの基準とされている。
中学生に上がる頃には、友人達はアイプチやバンドエイドなどを瞼に貼り、二重瞼を作ろうと奮闘していた。ほとんどのメイクのHow toには、如何に目を大きく見せるかということが書かれている。私は今までこれに対して、何の違和感も抱いてこなかった。
だけど今考えると、肌の色や体型についての多様性は受け入れられて来ても、目に関して特筆されているものを目にすることはあまり無かったかもしれない。
自分の容姿に自信を持てたり、自分を好きになれるのはメイクの素晴らしいところだし、私自身、出掛けるとなるとマイラインをしっかり引くし、マスカラだってたっぷりつける。この詩のようにそんなメイクをしているからといって、自分のアイデンティティーを大切にしていないと罪悪感を持つ必要は無い。
けれど、家に帰ってメイクを拭き取った後の鏡に映る自分の姿も、心から愛してあげたいと思う。
あなたも私も、そのままで完璧だから。
参考文献
『レシピ』、ジャニス・ミリキタニ
編集 Emiru okada
翻訳 Yuko C. Shimomoto
グラフィック Ayumi White