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  • Mia Glass

カバーアップ:肌を見せてはいけないのはナゼ?


「ミア、荷造りする時はちゃんと日本で着れる服を選びなさいね。いつものショートパンツやタンクトップは無し!」


毎年東京に帰省する度、日本人の母はこう私の服装について忠告する。こんなことを言う母を責めないのは、日本では家から一歩外に出れば、もっと大きな問題––女性の服装に関してのスラット・シェイミングが存在するからだ。



日本では様々な最先端の流行が交錯する一方、女性の服装についてまだかなり保守的な考え方が蔓延っている。どんなに母に「私は自分のために自分を着飾っているのだ」と反論したくても、あっさりと諦めてしまう。たとえ母が許してくれたとしても、日常的にすれ違うおじさん達から浴びせられる嫌な目線や言葉のことを考えると、そこまでする価値が無いように思える。彼らにとって、私がデニムショーツやVネックのカットソーを身に着けることは、私が淫乱、二次元のアニメキャラ、もしくはただの物—つまり男性を喜ばせるために存在していることを意味する。


日本人はよく若い女性や少女に、“露出度の高い”服や“挑発的”な服を着ていると性被害に遭

うと警告する。一方アメリカでは、タートルネックの代わりにクロップトップを着ていても、被害者のせいにはならない考えの方が一般的である。「乳首解放運動(Free the Nipple)」というムーブメントも過去にあって、リアーナやマイリー・サイラスらのセレブ達からも支持された。夏の間に地元にいる時は、快適に過ごすために夏の間ブラを着けないことも多いが、もう一つの理由として男性の乳首と女性の乳首を平等に扱ってほしい意味合いも込めている。また、フランスでは #jekiffemondécolleté(自分の谷間を愛している)のハッシュタグがトレンドしていたこともある。女性達が襟ぐりの深いトップスを着ているクローズアップ写真を投稿し、胸の谷間を見せることへの偏見を取り除こうとした。


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残念ながら、これらの運動が日本で始まったらどのような論争が巻き起こるかはもう予想がつく。日本で襟ぐりの広いシャツを着る場合は、中にキャミソールを着るのが普通だ。胸元カバーの広告さえ見たことがある。短めのキャミソールのようなブラ付きのインナーで、暑い夏場にキャミソールの代わりになるものである。社会は肌を隠すことを最優先に考えており、女性の熱中症予防や快適さなどは単なる後付けでしかない。


アメリカで持ち合わせている果敢なフェミニスト思考を日本でも同じように持てたらいいのにと思うけど、日本文化はその逆を重んじる。反論したらもっと注目を浴びてしまうし、しまいには「日本人ですらないくせに」と言われてしまうだろう。黙って問題を無視することが日本らしいことだからそうしているけど、何も言わないことでさらに問題を加速させているような気がしてならない。


とはいえ、幼い頃から日本のファッショントレンドを見ている中で、少し変化は感じられる。お気に入りの店や、渋谷や原宿の街中でオフショルダーのトップス、背中開きのシャツ、透けている素材の服、ミニスカートなどがもっと見られるようになった。もちろん、革新的な東京の都会のファッションしか見ていないし、日本で“乳首解放運動”なるものが広まるにはまだまだ道のりが長いだろう。でも、若い世代は徐々にオープンになってきている。人によってはもっとコンサバな服装(私はこれも大好き!)を好む人もいるだろうけど、誰もがファッションを通して自分らしさを表現できる選択肢が無限にあることが、日本にとっての大きな一歩となるのではないだろうか。


それまでは私は肩と胸を隠し、汗を拭いながら8月の猛暑の中に踏み出す。でも今回は、少し大胆な格好で—小さなスリットの入ったマキシ丈スカート—で出かけてみるのだ。


翻訳 Yuko C. Shimomoto

グラフィック Ayumi White

編集 Emiru Okada

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