• Sanae Tani

Who Decided Girls Should Remove Their Hair? (日本語)


どこもかしこも、「ツルツルの肌になろう」というメッセージであふれている


電車に揺られていると、広告のモデルが「脱毛するなら今」と語りかけてくる。SNSやYouTubeを開けば、「まだ脱毛してないの?」「脱毛してない女は女として見られない」という強い語調に、脱毛サロンに通ったことのない私は、なんだか責められているような気分になる。


今や脱毛サロンは街中いたるところに存在していて、日本の女の子たちは、大学生ぐらいになるとどのサロンに通うか見定め、お金と時間をかけてムダ毛をゼロにする活動を始める。


それを楽しいと感じている人に誤解しないで欲しいのは、私は脱毛している女性を非難するつもりは全くないということ。自分を磨くのは素敵なことだ。自らの時間やお金をかけて、体毛の無い、ツルツルの肌を保つことが自分の思うベストな選択肢なのであれば、それで良いのだ。


でも、もしかしたら心のどこかでこう思っている人はいないだろうか?


「正直脱毛なんてめんどくさい。しなくていいならしたくないな」


「でも皆してるから」


「ツルツルじゃないとおかしいって思われるから」


こんな思いを抱えながら、それでも多くの女性が自分の体毛を“ムダ毛”と呼び、そのムダな毛が少しも無いツルツルな肌を目指す背景には、これまで長い時間をかけてメディアによって醸成されてきた空気感があるのだろう。テレビや雑誌の向こうで微笑んでいる、「美しい」「可愛い」と持て囃されるモデルや女優たちに、脇毛や腕の毛が生えているところはほとんど見たことがない。TVやSNSで流れる広告では、ツルツルの肌を「愛され肌」なんて読んでいる。


まるで、体毛をそのままにしている女性は美しくなくて、愛されないみたいだ。


そんな空気感が、女性たちを脱毛に駆り立てている。


きっと、脱毛サロンに通う女性たちに、「体毛をそのままにしておくのは美しくないし、愛されないからそうしているの?」と聞いても、YESとは答えないと思う。女性に体毛が生えているのはおかしい。ムダ毛は脱毛する。が、暗黙のルールになっているから。

2020年4月、ネット署名を集めることができるプラットフォーム「Change.org」にて、秋田公立美術大学に通う村田葵さんというひとりの女性が、体毛や体型を卑下するようなYouTube広告の取り下げを求める署名を始めた。12月現在で約47,000件の署名が集まっており、毎日新聞や朝日新聞、AbemaTVといった複数のメディアから取材をお受けになっているそうだ。私もこの署名が立ち上がってすぐに、若い女性が立ち上がって声を上げてくれた事実に本当に嬉しくなって、すぐさま署名をさせてもらった。そしてこうも思った。こうした広告に立ち向かうことをきっかけとして、今度は声を大にしてこう言ってみるのはどうだろうか?

「私の身体は私のもの」、そして「体毛は自然なもの」と。


SNS上では、そんな主張をする運動がすでに注目されている。


女性の体毛を自然なものとして定着させるため、アンダーヘアや脇毛、すね毛といった体毛をナチュラルなままにした姿をInstagramにポストする “Januhairy” = ジャニュヘアリー運動だ。このアクションのアカウント@januhairy は、現在3.4万人のフォロワーを抱えている。さらには、Z世代を中心として、脇毛をカラフルに染める「ユニコーンヘア」がビューティートレンドになっている。そして日本でも知名度の高いマイリー・サイラスやアシュリー・グラハム、そしてマドンナといったセレブリティたちも、自身のSNSやレッドカーペットで意図的に体毛を見せつけたこともあった。

日本の外に目を向ければ、“体毛はナチュラルなもの”を体現してくれるロールモデルが沢山存在する。


現在の日本の状況では、Januhairyに参加している諸外国の女性たちのように、堂々と体毛を見せつけることは難しいだろう。脱毛サロンに通ったことも通う気もないし、体毛はナチュラルなものだと主張したい私も、露出の増える時期になれば、やっぱり処理した方がいいかも、と思わせられる圧力が充満している。


そんな日本でも、2020年SNSを中心にポジティブな意味で話題になった広告があった。刃物メーカーである貝印の「ムダかどうかは、自分で決める。」というメッセージを載せたヴィジュアルだ。同社では、15~39歳の男女600人を対象に脱毛に関する意識調査を実施し、9割が「ファッションや髪形のように(剃ることや脱毛について)自分で自由に決めたい」と回答したそうだ。せっかくそう感じている人がいるのに、「常識」のフリをした圧力に押し潰されたくないと心から感じる。


大切なことは、自分の身体は自分の意思でコントロールするということ。


そして、自分の選択が、自分の心をヘルシーに保つものであることだと思う。


長い時間をかけて培われてきた、「女性の体毛はアンナチュラルなもので脱毛すべき」という圧力は、「常識」の皮をかぶって私たちの行動をコントロールしようとしている。でも、自分の身体は自分のもの。だから、自分の体毛のことだって自分で決めていい。脱毛していないあなたを美しくないと決めつける権利も、愛されないと断じるロジックも、どこにも、誰にも存在しない。


もし、至る所にあふれる脱毛のメッセージにプレッシャーや不快感を覚えているなら、そんな圧力から解放された人達に目を向けてみてほしい。その人たちは、体毛が生えていてもとても輝いている。


あなたの美しさは、あなた自身が自由に決めるべきもの。どうか忘れないで欲しい。


編集:Meg NH

グラフィック: Maya Kubota