皆さんは自分が男、もしくは女と分けられることに疑問を抱いた事はあるでしょうか。
というより、自分が「自分」という人間としてではなく、「身体の性」によってカテゴライズされる事に違和感を少し覚えた事はないでしょうか。
私の幼馴染は比較的男友達が多く、男の子の集団の中に紅一点、なんて事は日常茶飯事でした。年齢を重ねるにつれ、彼らといる時の周りの目がとても気になる様になってきた瞬間は、今でも鮮明に覚えています。
男友達と遊んだ時には周囲から
「彼のこと好きなの?付き合ってるの?」
「貴方と彼はお互い好き同士なのよね。」
と言われて、その様な感情が全くない私は激しく動揺しました。
そして紅一点で男の子の集団と遊んでいると嫌な目で見られ、近しい人達にも「あまりよく思われないから気をつけなさい」と注意をされ、幼い私は自分を責めました。
この記事を書くきっかけとなったのが、その当時の日記がこの間見つかったからなのですが、そこに記されたその当時の私の疑問をいくつか一語一句そのまま抜粋させていただきます。
「なんで私が女友達と遊んだ時同じ反応しないの?」
「私にとっては女も男もどの性別だって一緒で変わらないのに、どうしてみんなそうやってきっちり分けるんだろう。」
「なんで女の子と2人で遊ぶとなにもいわれないのに、男の子と2人で遊ぶと色々影でみんな話すんだろう、なんでいろいろ言われるのかな。私がおかしいのかもしれない。」
「なんで私が男の人だけが好きって勝手にそうだと信じて疑わないの?なんで?」
幼過ぎて、まだ周りの反応と自分の中の何かの違いが生み出す違和感が上手く処理できずに、困惑と動揺に苛まれる日々はその後数年ずっと続きました。
その数年後、私は父の仕事の関係でアメリカに家族で引っ越すこととなりました。
そこでは日本より男女の差がなく、あくまでも私個人の感想ですが、とても居心地が良く感じました。
アメリカで生活して何年目かに自分がバイセクシャルだと言うことを認識した私は、幼い頃から悩んでいた「私にとっては女も男もどの性別だって一緒で変わらないのに、どうしてみんなそうやってきっちり分けるんだろう」という疑問について、私は「男女問わず人を
“人間”として見る事が多いけれど、それは私がバイセクシャルだからかもしれない…他の人は“異性”だと強く意識してしまうのでは」という一つの考えに行きつきました。
長年自分のどこかを雁字搦めにしていた鎖がすっと消えた様な感覚、そして安堵感と納得の気持ちが私を包み込みました。
しかしここで気づいた事が一つあります。この私の「違和感」の原因の一つが、私の周囲の人々、そして社会に「異性のみを好きになる」という概念が根本にあったからではないかと。
周りの誰も同性を好きになる事がある、という事を考えもしていない。だからこそ、「異性とのみ遊ぶのは、はしたない」「異性と遊ぶのは恋愛感情があるから」という考えに至るのでは、と私は思いました。
「不純異性交遊」ふじゅんいせいこうゆう
小学校の時読んだ本に出てきた言葉ですが、この言葉にもその概念たるものが根本にあるような気がします。
なぜ「異性」と遊ぶことのみが、「不純」とされるのか。
異性でも恋人ではないかもしれないし、同性同士でも恋人かもしれないのに。
私は日本の大学に進学を決めた際、日本でジェンダーについて活動をする事を決めました。それがどれだけ難しくて偏見の目で見られるか、そして親に反対されるかも十分に理解していました。
ただ幼い頃の私のように、社会の中で当たり前のように全員に当てはまるとされる概念に縛られ、それに当てはまらない自分を責めて、悩み続ける子供たちを少しでも減らしたかったのです。
「違うよ、貴方が間違っているのではないよ。間違っているのはその“当たり前”とされ、多くの人が疑問すら抱かないその考えだよ」と幼い頃の自分に声をかけてくれる人がいなかった分、私がその声をかける人になるという思いを胸に。
私は幼い頃に周りにいた人々や、本の作者を責めるつもりはありません。その人達もまた、その概念に囚われていた被害者だと考えるからです。しかし、その概念によって幼い頃の私のように苦しんでいる子供たちがまだいる事は、紛れもない事実です。大人になっても未だに苦しんでいる方々は、星の数ほどいるのではないでしょうか。
無意識に人を傷つけることほど、自分にとっても相手にとっても苦しい事はないでしょう。自分が加害者(傍観者)にも被害者にもならないためには、時として自分が当たり前と信じて疑わなかったことを疑う、と言うことが重要になってくるのかもしれません。
でも何から始めればいいか分からない、そんな皆さんに魔法の一言を教えします。これは、「ノンバイナリー」の方々を思いやる一言にもなります。
次回から恋愛の話題になった時に、この様に言い変えてみてはいかがでしょうか。
「彼氏/彼女」ではなく、「パートナー」と。
グラフィック Ayumi White
編集 Emiru Okada