top of page
  • Kokoha

夜遊びに触れる


 この夜はめちゃくちゃだった。

 ミニスカートにニーハイブーツ姿で、私たち七人は名古屋の街を堂々と歩いた。コートのポケットに手を突っ込んでいると、凍えるような風が素足を麻痺させたけど、夜の楽しさが私たちを目的地へと進ませた。会場内は暖かいというより暑くて、空気はタバコとアルコールの匂いで重くなっていた。この灰色の煙が私たちの肺を満たした。健康に良くないことはわかっていたけど、冷たい体に広がる暖かさに安心せずにはいられなかった。そこは暗くて、DJの隣で赤とピンクに光っているネオンだけが唯一の灯りだった。


 あの夜、みんなで歌って、叫んで、踊ったりした思い出の中で、触れたことを思い出さずにはいられない。


午前1時。 前の友達の手を握り、もう一つの手を背中の後ろに伸ばして、後ろの友達の手を握った。 手だけを繋いで、私たち七人は進んだ。 そうすれば、人混みの中で迷子になることはない。このタッチは誘導だった。


午前2時。 私は手を離して空中に投げた。反響するビートに背中を丸めて、友人が私の腰を撫でる。 それは私が慣れ親しんだ感覚だった。いつもは見知らぬ人の手だけど、この時の彼女の手は、誘いでも義務でもなかった。むしろ彼女の手は優雅に滑り、私のドレスの裾の上を何度も踊った。このタッチは安心だった。


午前3時。「トイレに行く間、私の飲み物を持ってて!」 と彼女は言った。 躊躇うことなく、私は友達のカップに手を伸ばした。 私は彼女の半分ほどあるカップを握りしめ、レッドブルウォッカの氷で冷えた彼女の指が私の指に触れるのを感じた。このタッチは防御だった。


午前4時。 私は彼女たちの顔をそっと支えながら、大音量の音楽の中で耳を探した。顎に手を添えて、耳元に寄り添ってみた。彼女たちも同じように私の顔を包み込むと、なんだかその声が大きくなった気がした。私の頬やあごに触れた手を伝って、彼女たちの愛情を感じる。このタッチは気遣いだった。


午前5時。 朝日の明るさに目がくらんで、私たちはハッシュブラウンとアイスティーを持って、マクドナルドに座っている。 友達が私の太ももに手を置き、私は目を閉じる。私は警戒を緩め、疲れ果てた自分を受け止める。この睡眠は混乱からの逃避ではなく、ただの休息で、静かで穏やかだった。このタッチは安全だった。


 私たちのタッチは、別れると互いに離れていって、私は一人で寒さに戻った。突風が吹く度に、私の暖かさを奪う度に、私はますます人間的になった。私が無防備だったという意味での人間。 裸。 そして私はすぐに彼女たちのタッチがないのを惜しんだ。それぞれのタッチは思いやりがあり、心の優しいものだった。それは私が慣れた卑猥な要求へ続くような、汚くて生々しい気分を残すタッチではない。腰、太もも、胸の谷間に食い込み、目に見えない手形が付くようなタッチ。一人で駅に向かって歩いている時恐れているタッチは、こういうもの。


 でもあの夜、私と彼女たちのタッチは優しく、あらゆるタッチの摩擦の中に、暗黙のメッセージが残っていた。私たちはお互いのためにそこに居て、導かれ、慰められ、守られ、気遣われ、そして安全だという。




翻訳 Rio Ishida

編集 Emiru Okada

グラフィック Claudia MacPhail

bottom of page