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  • Charles McCutcheon

日本での同性愛の歴史と現状


欧米諸国に比べて現代の日本では、恋愛と性の多様性に関する問題がタブーとされていました。しかし実はごく最近まで、日本でも様々な性のあり方が一般的だった時代がありました。古くから、多様な性は西洋化の影響とみなし、同性愛を「変態性欲」としてタブー視して来ましたが、「日本は同性愛に寛容だ」という幻想がLGBTQの不可視化に加担し続けています。


昔は男性同士の性愛のことを「男色」と呼び、江戸・戦国時代から明治時代に至るまで、男女の性愛と大して変わらない扱いを受けていました。男色が起きやすい場面は、寺社、武士が大勢いる戦場、女性の少ない都市圏など、男女比の偏っている所が多かったです。中国や韓国をはじめ、他の国でも男色は起きていたが、日本でだけは笑い者にされたり、タブー視されていませんでした。


しかし、19世紀に日本で西洋化が始まり、男色が違法となりました。1868年に日本は明治時代に入り、明治維新が始まりました。その明治維新によって「文明開化」という、日本の制度や習慣の西洋化が起こりました。文明開化の利点は多くありましたが、文化的な側面から見ると元来の日本の文化や習慣より頑なな西洋の習慣からも多くの影響を受けました。男色は、その西洋化によってタブーになった日本文化の一つでした。男性同士の性行為が「鶏姦罪」(けいかんざい)と言われるようになり、1872年に違法になりました。しかし、これは「同性愛」が違法になったわけではなく、「男色」と言う男性同士の性行為が違法になっただけでした。では、同性愛そのものはいつからタブー視されるようになったでしょうか?


「同性愛」という概念が日本社会で通用するようになったのは、1910年代からでした。「お目」「おでや」と呼ばれていた女性同士の恋愛がメディアで「流行っていた」などと言われ、当時よく起こっていた女性同士の心中が注目を集めていました。特に中学と高校の学生寮では、女性同士の関係が友情か恋愛か区別が付きにくいと思われていたため、問題視されるようになりました。その学生たちの性関係を「治す」ために性教育を受けさせるべきか否か、という様々な意見があったため、西洋ではすでに確立されていた「性科学」という科学分野の研究を日本でも促しました。1920年代の西洋性科学の思想に影響を受けた日本の性科学者は、同性愛は不自然で、病気として扱われ治療をすべきだと断じたため、「変態性欲」だと認識されるようになりました。男色が違法になった時、男色は個人の責任と思われていましたが、1920年代の西洋性科学思想が日本社会に染み込んで、同性愛者は変態性欲の病人だと見なされ、「こうなってしまった」のは家族の責任だと考えられていました。


現代の日本社会では、西洋社会の同性愛に対する態度と区別をつけ、「日本は同性愛に寛容だ」と思う人が沢山居ます。しかし、寛容だと主張している人たちは、今なお日本で起きている同性愛者に対する差別を無視しています。日本で見られる「寛容さ」というのは、許容しているだけで、決して同性愛者を認め、支援しているわけではない場合が多いです。現に、同性婚はまだ日本では認められていません。その上、寛容言説が本格的に始まった1980年代のエイズ・パニックの際、米本昌平氏と赤坂憲雄氏を含む多くの日本の思想家は、日本では同性愛者を嫌う宗教的背景がないため、社会的に強い差別が存在していないと主張しました。しかし同時に、エイズ予防法という同性愛者の人権を侵害する法案が可決されました。よって寛容言説は、その当時も今も、同性愛嫌悪を隠蔽する効果を持っていると考えられます。


さらに、 メディアやテレビではあまり見られないため、日本のLGBTQコミュニティーは無視されがちです。日本における「性的少数派」の印象は、バラエティーやテレビに出る、女装または男装をしている人たちだけです。女装や男装をしないゲイやレズビアンは、テレビに出ることがかなり少ないです。そのため、異性愛者だと思われていた人が、実は性的少数者だとカミングアウトをすると、認めてもらえないことが多いです。このような人たちの存在は、不可視化されると言われています。この不可視化は、「日本はLGBTQに対して寛容的だ」という幻想が存在する一つの理由で、LGBTQの人達が訴える差別を無視することは、ひどくLGBTQの人たちを傷つけています。LGBTQの問題を口にしない「寛容的」だと思われている日本社会を変えるには、性的少数者やLGBTQのコミュニティー、彼らの苦労などについて理解する努力が必要です。


古くから性の多様な日本は、西洋化して同性愛を「変態性欲」とタブー視し始めたが、「日本は同性愛に寛容的だ」というLGBTQの不可視化に加担している幻想が未だに続いています。今の日本で一人一人にできることは、思い込みをせず、ネットで調べたり質問をしたりして、LGBTQの不可視化を阻止することです。まず、周りにいる人をLGBTQではないと思い込まないでください。恋愛のことで質問をする時、「彼氏」「彼女」など性的指向を想定する言葉より、ジェンダーを想定しない「パートナー」と言う言葉を使いましょう。そして、LGBTQのことで質問をする時、決して攻めているように聞かず、敬意を持って聞きましょう。周りにいる人たちもLGBTQのアライ(味方)になれるように、知識を広めましょう。このようなことをしていくことで、LGBTQに対する偏見を減らし、本当にLGBTQに寛容的な社会を築いていけます。



編集 Emiru Okada, Mutsumi Ogaki and Ariel Tjeuw

グラフィック Charles McCutcheon and Ayumi White

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