ある日、知り合いと何気ない会話をしていた時です。街にあった広告を見て、彼が呟きました。
「日本に生まれてよかったよ、だって人種差別ないじゃん。」
私は今自分が聞いた言葉を本当に聞いたのか、信じられませんでした。ぐるぐると様々な事が頭の中を駆け巡ったので、自分を落ち着かせるために深呼吸をして、彼に聞きなおしました。
彼の口から別の言葉が出てくる事を信じて。
「ごめん、なんて言った?」
しかし、出てきた言葉は
「え?だから、日本に差別ってないから良かったって言った。」
でした。
私は悲しみや怒り、悔しさやに呑み込まれ、自分を落ち着かせようと奮闘しましたが、余りにも衝撃的過ぎて暫く何も言えなませんでした。
さて。
日本にも差別があるのは、もちろん皆さんご存知でしょう。(I hope you do.)
しかし、どうしても「差別」と聞くと白人対黒人を思い浮かべてしまうのではないでしょうか。
でもね、違うんです。差別はもっともっと身近に存在しています。
ここで、「俺はデータにない限り信じないんだよね」と言った彼のためにも、データを見てみましょう。
外国人である事を理由に、入居を断られた経験のある人 39.3%
日本人の保証人がいない事を理由に、入居を断られた経験のある人 41.2%
「外国人お断り」と書かれた物件を見たので諦めた経験のある人 26.7%
これらのデータは引っ越しや転居の際に、「日本人ではないから」という理由だけで断られた人々のデータです。
見た目や国籍だけで、特定のグループを虐げる。
これは立派な差別です。
次に、職場においてのデータを見てみましょう。
外国人である事を理由に、就職を断られた 25.0%
同じ仕事をしているのに、日本人よりも賃金が低かった 19.6%
外国人である事を理由に、昇進できないなどという不利益を受けた 17.1%
勤務時間や休暇日数などの労働条件が日本人より悪かった 12.8%
どうでしょう?「日本人じゃない」という理由だけで、仕事においても不利益を被る人々はいるのです。
「えー、でもそんなに多くなくない?」と思ったらそこのあなた。(I’m looking at you.)
“少ない=存在しない”
“少ない=無視して良い”
では無いのです。
それにこれらのデータは全て、「日本人」が「日本人でない(ように見える)人」にした差別。白人対黒人ではなく、日本人が全面的に関わっているものです。
「ここまで見てきたのは国籍差別・外国人差別であり、人種差別ではない」と思ったそこのあなた。
ハーフの人たちも、日本国籍なのに見た目が「外国人」という理由で、さまざまな差別を受けています。
(もっと知りたい方は、ブロッサムのWebサイトに“The Mixed Experience in Japan” by Mia Glassと言う記事が載っているので、見てみてくださいね。)
「自分が経験した事が無いから存在しない。」
「自分は差別を受けている人を日本で見た事が無いから、日本には差別はない。」
という考えは間違っています。はい、残念ながら。
だってあなたが見た事がなくても、テレビの中の芸能人はリアルに生きているでしょう?
あなたが話した事がなくても、他の言語って存在するでしょう?
あなたが経験した事がなくても、他の職業って存在するでしょう?
無知が一番怖い。無意識のうちに人を傷つける事は、他人にとってもそして自分にとっても、一番残酷である。
これは私が日々大切にしている言葉の一つです。
こんな風に記事をたらたらと書いている私も、完全に不完全。日々知らない事だらけで、学んでいます。
でも、それでいいんです。
「知らない」と目をつぶらずに、知らなかった自分に恥ずかしさや不快感を覚えながら学ぶ。
それが、大切なのではないかなと思います。
参考文献:
人種差別実態調査研究会 (2016) 『日本国内の人種差別実態に関する調査報告書』
公益財団法人人権教育啓発推進センター (2017) 『平成28年度 法務省委託捜査研究事業 外国人住民調査報告書-改訂版-』
グラフィック Maya Kubota
編集 Emiru Okada