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  • Kokoha

夏の身体

内容注意:摂食障害について書かれています。


今年の夏に入って、私は11歳だった2018年の夏に連れ戻された。その夏は、幼少期を過ごしたミシガン州にある小さなホテルの一室で過ごした。幼少期に過ごした町とその友人たちと会うのは2年ぶりで、 私にとってこの夏は一生に一度の再会となるはずだった。先に親友が私のホテルの部屋にやって来て、ビキニと裸足で薄暗いホテルの廊下を走り、ホテルのプールまで行った。私たちは飛び込み、離れていた時間を取り戻すように手を繋いだ。 母も後を追って、一緒に育った二人の少女の再会の写真をプールサイドから撮り、微笑んでいた。私はその瞬間が、その年で一番幸せだった。


休暇が終わり、プール、故郷、そして親友から何マイルも離れている日本に戻ってきた。私はその時の自分を必死に想像しようと、休暇中の写真を見返した。 母がプールで撮った写真を見ていると、自分の見た目にしか集中できなかった。私の身体の全てが間違っているように感じた。 お腹は平らではなく、腕は太く見え、胸も思ったほど盛れていなかった。 私の背は低く見え、濡れた水着がラップのように太い腿に張り付いていた。


翌年、私が摂食障害と闘っていた時、プールにいる私の写真が頻繁に脳裏をよぎった。そのイメージは私の脳裏に焼き付き、できるだけ体重を減らそうとする私の病的な動機を刺激した。その写真に映る自分のようにはなりたくなかった。写真の女の子は私にとって見知らぬ人で、過去に置いて行きたかった人だった。私は彼女になりたくなかったし、再び彼女になるなんてもっと嫌だった。私はかつての体から、脱却することを目標にした。


私は11歳の私に、謝らなければいけない。何年もの間、私は当時の彼女の身体を辱め、批判し、虐待してきた。プールに飛び込み、愛する人と手を繋ぐために受け入れたあの身体。あの夏に作った思い出が、自己嫌悪と不安によってかき消されてしまうと彼女が知っていたら、悲しんでいたでだろう。でも、私は自分の身体をいじめた自分自身をも、受け入れる責任がある。彼女は強く、立ち直る力を備えつつ、今では優しさが自分の身体にどのような影響を与えるかを知っている。


今日、私の新しいビキニが届いた。ピンクでセクシーで、ちゃんと結んでおかなければいけないタイプのもの。私は彼女になるから、今年の夏はここ数年の夏とは違う。私はあの11歳の女の子で、人生で最高の夏を過ごしている。




著者 Kokoha

翻訳 石田里緒

編集 岡田笑瑠

グラフィック 大野蓮

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