• David Song

私の母

私は韓国系アメリカ人、いわゆる二世というやつだ。韓国人の血を引いているが、韓国を訪れたことはない。それでも私は韓国料理が好きで、韓国語もペラペラで、韓国の文化は私にとって重要だった。


でも高校2年生の時、日本の文化にも興味を持つようになった。それは友達の勧めで、アニメを見るようになったということだ。大学の友達から聞いた話だと、他の高校では、アニメが好きな人はリア充やスポ根に、いじめられることがよくあるようだ。でもうちの高校では、そのようなことが一切なかった。何故かというと、アニメが好きな人はリア充だったからだ。だからアニメが好きということは、学校では問題ではなかった。でも家では複雑だった。


「嫌い」という言葉は強すぎるかもしれないけど、少なくとも私の母はアニメが好きではなかった。見ることを禁じることはしなかったものの、私がアニメを見るのがあまり好きではなかった。やがて母の目を盗んで、一人でいる時に見るようになった。そして私はアニメだけではなくて、漫画やビジュアルノベルにも興味を持つようになった。当時は英語に翻訳されていない作品が多くて、仕方なく日本語を勉強し始めた。それは私の人生の、いわゆる分岐点、だったのかもしれない。いつしか私の日本語の読書力は、韓国語の読書力を遥かに上回っていた。一度冗談交じりに、子供の頃からずっと韓国語を話してきたのに、今は日本語の方が上手い、という事実を母に言った。それを聞いた母は笑ったものの、子供のころ韓国から持ってきた絵本を読み聞かせをしてくれた母は、とても悲しい思いをしただろう。



母は前から、私が日本語を勉強することに反対していた。「いくら勉強したって、日本生まれ育ちの人よりうまく話せるわけないし、アメリカでは金儲けのために使うことも難しい」、とよく言われた。私が日本に関するあれこれを言う度に、母は日本の悪口を言い返してきた。放射能がどうだの、母が雨に打たれるのを避けたのは、日本海からの放射能が降ってくると思ったからだ、とか。韓国は日本より地位がある国だ、と説いてきた時もあった。ひらがなとカタカナの歴史を母に説明した時、母は「実はね、それ韓国からパクったの」と言って、道筋が通らない記事を証拠として見せてきた。


母の愛国心に反発するかのように、私は韓国を嫌うようになった。アメリカ人なのに、なんで今でも韓国を「私達の国」と呼ぶの?母の言っていることが訳わからなくて、理解しようともしなかった。その当時は知らなかったけど、母が日本を嫌うには理由があったのだ。韓国系の人が日本の文化に興味を持つことは、歴史に関する無知を表わしているのか? 実を言うと、当時の私は韓国と日本の間にあった歴史について、何も知らなかった。無知の極まりだった。後になって知ったことは、私の母方の曾祖父は、日本統治時代の朝鮮で独立活動をしていて、日本軍に拷問を受けたことがあり、その後遺症で死ぬことになった。母はそのトラウマを引きずっているようだ。


私の専攻で卒業するためには、日本以外の国に関する授業を一つ取る必要がある。だから仕方がなく、現代の韓国に関する授業を取ることにした。(最初は韓国語の授業を取ろうとしたが、継承語話者向けではなかったので、諦めた。)その授業はとても興味深く、子供の時以来、改めて韓国に興味を持った。その授業を通して、韓国人の心理と歴史的背景を理解するようになって、母の心理もより理解出来るようになったと思う。また、私には韓国国籍の友達ができた。それが理由で、また韓国ドラマを見るようになった。一人暮らしをしている今、よく母に電話して、韓国料理のレシピについて訊くようにしている。最近は韓国の歌手の歌を聴くようになった。もちろん現代の流行曲ではなく、子供の頃、母がよく家で流した曲を聞いている。暇な時、母に曲のお勧めも訊く。


子供の頃の母はアニメが好きだった。日本発だと知らなかったのか、それともその頃は、そのようなことを気にしなかったのか、『ベルサイユのばら』が好きだった。私は『ベルサイユのばら』を見たことを母に話したら、母は自分もそのアニメが好きだと言った。それが唯一、母とアニメについて話せた時だと思う。母は今でも日本に関して警戒心を持っているが、息子が日本の文化が好きで、翻訳者として食いつないでいることを受け入れるようになったと思う。この間、コロナが終わったら、私と一緒に韓国を訪れる時、日本も訪れたいと母が言った。


About David Song

私は日本の文化が好きな韓国系のアメリカ人です。両国の歴史を知らずに日本に興味を持った私と、日本が嫌いな母についてエッセイを書きました。




編集 Emiru Okada

カバー Ayumi White

イラスト David Song