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  • Kiana

私のその後4:もうサバイバーじゃない、新しい私


数年前に性暴力に遭ってから、私の人生はさまざまな角度で前進した。

治療の方はカウンセラーさんから教わった、PTSD回復の4段階の3番目「再統合」と4番目「回復」を行き来している日々。どうやら「回復」と判断されても良いようだ。


そんな日々の中、パートナーが私のアイデンティティを取り戻してくれた瞬間について綴りたい。


パートナーが米軍の性暴力防止プログラムに参加した。

彼は私の身に起きたことや、私の感情をより適切に理解したいと考えて応募してくれた。


ある日の講義で、彼は被害者が事件後に抱える感情や、被害者が向き合っていかなければならないことについて学んだ。「セカンドレイプ」と呼ばれる、事件に関係のない他人からの言葉に傷つくこと。他の似たような事件を見聞きして自分の被害を思い出してストレスがかかり、嘔吐や蕁麻疹などの症状が出ることもある、いわゆる二次被害。そしてもう一つは、被害者としてのアイデンティティとの葛藤。


これを知った彼は言った。

「君は『サバイバーの君』じゃなくて、サバイバーというアイデンティティが付いていないただの『君』という存在を僕に見て欲しかったんだね。

事件後に僕らは出会ったから、僕は事件の前の君を知らない。僕は君を『サバイバー』として見ているわけではなかったけど、それを含めて君だと認識していたのかもしれない。君には僕がそう見ていることが分かっていたんだね。

事件に遭ってから、『被害者』や『サバイバー』のイメージが君に付き纏って、君の全てを支配しているような気持ちになっていたんだね。でも君はサバイバーとして救われたいんじゃなくて、事件に遭う前から良い意味で大きく変わった、ありのままの君自身を見て欲しかったんだね。

君が薦めてくれた本『私の名前を知って』がどうしてそのタイトルなのかやっと分かった。君が僕に伝えたかったことは、あのタイトルに全てが詰まっているんだね。今やっと分かったよ」


「ありがとう。分かってくれて本当にありがとう」


大泣きする私の横で彼は続ける。ちょっとユニークな例えだったけど、分かりやすいからシェアしたい。


「なんだか、ジブリの『千と千尋の神隠し』で、ハクが最後に千尋から『あなたは川の神様だったのね!』って言われてハクが大喜びするシーンと似ているね。ハクは、他の誰でもない千尋に、自分の本当のアイデンティティを知って欲しかったから喜んでいた。僕が本当の意味で君のことを理解した今、君はそんな感じで喜んでるの?

君は他人から『サバイバー』として見られて、それが自分の全てになってしまうのが怖かった。そうではなくて、もう君はサバイバーかどうか、被害者かどうかなんてどうでもよくて、たくさんの恐怖や悲しみを乗り越えて成長した、『新しい君』をそろそろ周りは認識してよ、ってそんな感じ?」


「そのとおり。事件前から私のことを知っていて、事件後の一番辛い時からそばにいる数人の友達は、本当の意味でのエンパシー(共感)で、私のことをずっと『ありのままの私』として見てくれていた。


あなたが理解できていなかったんじゃなくて、私たちが事件後に出会ったからこそ、そう見られても仕方がないことだと思ってた。あなただけじゃなくて、他の人についても諦めてた。でも、こうやって勉強して、私を知らないはずの時間を飛び越えてきてくれてありがとう」


この話は、性暴力の被害者だけに当てはまるものでもないと思う。

虐待を受けたことのある人、大きな事故や災害に遭ったことのある人には当てはまりやすいかもしれない。そういった経験のない人たちにとっては、少々想像しにくいかもしれない。参考にしてほしいなんておこがましいことは言えないけれど、エンパシーってこういうことじゃないかな、と彼の言葉を聞いて実感した。


こんなエンパシーがじわじわと、一人一人の経験から広がっていってほしい。何かの被害者や被災者だけがPTSDの中で経験するのではなくて、世界中のみんなが、自分のアイデンティティを自覚して、自分の軸を持って生きられる人が増えたらいいなと思う。




著者 Kiana

編集 岡田笑瑠

グラフィック 鹿野里美

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