• Sanae Tani

傷つきたくない私、フェミニストの私


2021年1月14日、「エトセトラブックス BOOKSHOP」というフェミニストのための書店がオープンした。


この店舗は、元はフェミニズムに纏わる書籍を専門に発行する出版社「エトセトラブックス」が初めて実店舗の形をとったもの。フェミニストたちが、同じ場所に集い、沢山のフェミニズム書籍に触れ、知識と連帯を深めることができる場である。私は元々この出版社が独自に発行している「エトセトラ」という小雑誌が好きだったし、この書店に行けば素晴らしい書籍と人々に出逢えるのかと思うと本当に嬉しくて、早く店舗を訪れたい、その気持ちでいっぱいだった。そしてこの書店から、日本のフェミニズムがもっと勢いを増していくことを期待した。

しかし、何らかの運動が盛り上がると必ずと言っていいほど生じるのが「バックラッシュ」。上述した「エトセトラ」の最新刊(Vol.4/2020年秋冬号)でも特集のテーマとして取り上げられていた、ある流れに対する「反動」や「揺り戻し」のことだ。#KuTooの石川優実さんはバックラッシュについてこう語っている

「(前略)でも、なんだろう。これってあんまり『初めての経験』という感じがしない。これまでにもこんなようなことは薄っすらと、しかしずっと経験してきたような気がする。女だという理由で嫌がらせをされたり、セクハラを受けたり、嘘をついていると決めつけられたり(中略)思い返せば、生きてきた33年間ずっとバックラッシュ的なものに苦しめられてきたような気がしてならない。」(エトセトラVol.4 「はじめに」より抜粋)

ある日、美容ライターの長田杏奈さん―「エトセトラ」Vol.3/2020年春夏号で責任編集を務めた、優しさとエンパシーに溢れたフェミニストだ―がこのようなツイートをされているのを見かけた。


この「新しくオープンした女性のための書店」というのが、冒頭で述べた「エトセトラブックス BOOKSHOP」のことである。長田さんが迅速にインターネット・ホットラインセンターに通報してくださったが、上記の前にリツイートしていたのが下記ツイートだ。

フェミニストとしてTwitterを利用していると、こうしたいわゆる「アンチフェミ」と呼ばれる人々の、心ない、時には犯罪予告とも取れるような、まさにバックラッシュと言えるツイートを頻繁に目にする。その度に、フェミニストを人とも思わないような言葉の暴力の数々に心が抉られるような気持ちになる。そして何より危惧するのが、こうした人々の思想や行動がエスカレートした結果、現実世界で女性が暴力を受け、殺害されるという可能性である。実際に韓国では、ショートカットの女性が「フェミニストの髪型だ」という理由で、男性数人から激しいリンチを受けたという事件があった。今はTwitterというプラットフォーム上で繰り広げられている言葉の暴力が、フィジカルな暴力を伴った犯罪に発展しないと誰が言い切れるだろうか?

あなたは“Femicide(フェミサイド)”を知っているだろうか。女性が「女性である」という理由で殺害されることを指す言葉である。国連の統計によると、2017年時点で年間5万人以上の女性がパートナーや家族に殺害されていることが分かった。このフェミサイドが最も多く行われている国のひとつがトルコだ。Women’s Healthによると、トルコでは2019年だけで、500件ものフェミサイドが記録されたという。しかもこの件数は、きちんと明るみに出て記録されたものだけ。実際には毎年何人の女性が、「女性である」ことを理由に殺害されているかは不明なのだ。そして今、COVID-19によるロックダウンや外出禁止・自粛の影響で、このフェミサイドは世界各国で深刻な問題となっている。WOMAN PRESIDENTによると、フランスでは本格的な外出禁止令が発令された1週間後には、家庭内暴力が35%増加し、約2日に1人の割合で、夫や恋人の手で女性が殺害されている。

アンチフェミやフェミサイド。まったく同じ文脈で語ることはできないかもしれないが、女性が男性に敵視され害される、これらの根底にある意識は一体何だろうか。もちろん女性のアンチフェミニストやミソジニストも存在するが、そこにあるのはミソジニー(女性嫌悪)や、女性蔑視とそこから派生した女性の所有物化、そしてインセル(インボランタリー・セルベイトの略)の存在などではないだろうか? 2020年のジェンダーギャップ指数が153か国中121位にまで転落した日本でも、こうした意識は根深く蔓延っている。#KuTooの石川優実さんが33年間ずっと感じてきた沢山のバックラッシュも、アンチフェミニストやミソジニスト、インセルたち、そして自覚症状のない女性蔑視によって生み出されたものに違いない。

どうやったら、アンチフェミやミソジニーに心も体も傷つけられずにいられるのか。きっと私たちにできるのは、理解と連帯を深めることだ。言葉にすると陳腐に聞こえるが、少しでも傷つけられる女性を減らし、心身を守るためには、理解と連帯あるのみだと思うのだ。

例えば、「フェミニストは男にモテない女の集団で、だから男を敵視している」という誤った考えを正すこと。ブラック・フェミニストであるベル・フックスの「フェミニズムはみんなのもの~情熱の政治学」という名著(最近エトセトラブックスで復刊された)をぜひ読んでもらいたいが、フェミニズムは男性と敵対するものではなく、むしろ男性もフェミニストであることができるし、そうであるべきなのだ、という理解を深めること。あるいは身の回りに存在する小さな女性蔑視に気が付き、声を上げること。どんな小さなことでもいい。気づき、なぜそれが起こっているのか理解し、その理不尽に反対する人々の輪を広げていくことが重要なのだ。

ウーマンリブから、女性同士の連帯を「シスターフッド」と呼ぶようになった。この言葉を使うとフェミニストの男性を含まないような気がして気が引けるのだが、この際、私たちと共にアンチフェミやミソジニストと闘ってくれる男性たちとも、シスターフッドを感じたい、実は感じているのだと言わせてほしい。トルコでフェミサイドの犠牲にあった女性が「ミニスカートを履いていたから(被害に遭ったのだ)」と死してなお貶められたことに対して、「服装のせいではない」「女性が悪いのではない」と、ミニスカート姿の男性たちが抗議デモを起こしてくれた。遠い国で闘う彼らのことを知った時、私は間違いなく強いシスターフッドを感じた。Instagramで#ChallengeAcceptedという運動が盛り上がりを見せたことも記憶に新しい。中には「本当にこの運動の意味や由来を理解しているのだろうか?」と思うような投稿があったのも事実だが、この時も私は、強固なシスターフッドとその拡散力に心が震えた。

人に思想がある限り、アンチフェミやミソジニストはきっと消えない。でも、理不尽で悪意に満ちた言葉の暴力や身体的な暴力から女性たちを守るため、できることは必ずある。

私はフェミニストだからと暴力を振るわれたくないし、女性だからという理由で殺されたりしたくない。どこかの誰かが、フェミニストであるがゆえに暴力を振るわれるのも嫌だし、女性に生まれてしまったがために悲惨な最期を迎えるなんて絶対に許さない。10年後の女性が、今の私たちより少しだけでもマシな世界に生きていてくれたらうれしい。


だからこそ、正しいフェミニストであるために、未来の女性を守るために、今日も私は目を背けたい現実と向き合い、学び、連帯を示す。これを読んでくれたどこかのあなたも一緒に闘ってくれたら、こんなに幸せなことはない。



参考文献:


グラフィック Maya Kubota

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